わたしの仕事

わたしは四半世紀にわたって広告関係の仕事をしている。テレビCMのようなわかりやすいモノではなく、また「広告関係」というのも、どこまでが「関係」の範囲なのか明らかでないので具体的に説明しがたいが「文字で表現すること」を軸に、広告業界の片隅で生き続けている。

わたしは会社勤めではないので「ワークライフバランス」なんて概念はない。忙しいときは死ぬほど忙しく、ヒマなときは死ぬほどヒマ。その二つだ。

会社員のヒマは給料をもらえるヒマでありがたいが、一人で仕事をしている者にとってヒマは何よりこわい。忙しすぎて約束の期日に納品できなかったらどうしようというこわさも何度も経験しているが、ふりかえると、忙しすぎたときより2カ月半仕事の電話がなかった時の方がこわかった。2ヵ月を超えると、このまま仕事がなければ死ぬしかないという考えしか浮かばなくなっていたが、なんとか仕事の依頼があって復活した。

2カ月半の凪(なぎ)状態は最高記録で更新はストップしているが、1ヵ月くらいヒマなのはしょっちゅうある。慣れてきたといいたいところだが、慣れはしない。ヒマな時期は恐怖が背中から襲ってくる。

このようにわたしの仕事はバランスが悪い。乱暴な論法だが、だからわたしという人間自体もとてもバランスが悪い。もっと報われるように立ち回り、会社で生き残るすべもあったかもしれないのに独立してしまったというのが、バランスの悪さを象徴している。多数の人間の中でもうまく立ち回ることができ、それでも自分のやりたいことがあって独立する――そういう人が大きな事業を起こし、育てることができるのだろうと思う。だから、わたしは細々。だけど、クオリティにはこだわる。そんな職人でいいと思っているが、もう少し、さまざまな方向に発展させたいという希望はしぶとく持ち続けている。