ウチの子になった頃

わたしのネコは野良だった。生後2~3ヵ月で保護され、ネコ好きの縁をたどりたどってウチの子になった。当時わたしは会社を辞めて独立したばかりだった。会社員だったら迎えなかったと思うが、家で仕事をするようになっていたのと、仕事ばかりの生活を変えたいと思っていたので、しばらく悩みはしたが迎えることにした。

三毛と黒の姉妹で保護されたため「きょうだいで」とも頼まれたのだが、家も狭いし2匹の世話をする自信がなくて、1匹にした。2匹いてもよかったのかと思うこともあったが、思う存分ネコざんまいできたし、1対1の濃密な関係が築けて、いつもわたしを見つめてくれる「わたしのネコ」になってくれた。

ネコ好きの友人が届けてくれたのだが、わたしは開口一番「けっこう大きいね」と言ったそうだ。その友人は未だにそのことを言う。「大きいから連れて帰って」とわたしが言うとでも思っていたのかわからないが、わたしのその一言がひどく印象に残ったようだ。

ネコを迎えた18年前は今に続くペットブームが始まった頃だった。ペット用品は、専門店か百貨店の屋上などで売られていた。ようやくホームセンターなどでも扱われるようになって値段が安くなりかけていた頃だった。30年ほど前はネコトイレを7000円くらいで買った記憶がある。高いと思ったが選択肢もなく、そんなものかと思って買った。当時はネコを外に出している人が多くてトイレなんてあまり売れなかったのだろう。良い悪いではない。そういう時代だった。

ネコを迎えるためのネコ用品の準備には困った。車を持っていなかったので、ホームセンターや大型スーパー(今はイオンモールだが、当時は別の名前だった)に行けなかったからだ。百貨店には電車で行けたけれど、高価なものはもったいないというケチケチ根性もあった。

結局わたしは、タクシーで大型スーパーに行った。4~5キロくらい離れていたのだろうか。自転車で行くつもりは一切なかった。大量に買い物をしないといけないと思ったからだ。

大型スーパーでも、ペット用品は屋上というか屋根裏みたいな通常の売り場とは隔離された場所にあった。そこで、トイレ、首輪、食器、シャンプーなどを買ったと思う。

そしてタクシーで帰った。往復タクシーである。

タクシー買い出しの一件を、車必須生活をしている友人に話すとあきれられた。自家用車がなければタクシーになるのは当たり前なのに、「タクシーで買いものに行く」というのが(失礼ながらイナカモノには)受け入れられなかったようだ。

ネコを迎えて半年後にわたしは自分の車を買うことになるのだが、その件とあわせて「タクシーでネコ用品を買いに行って、ネコのために車を買ったったんだよねー」と、会うたびに言われた。ここは記憶があいまいなのだが「ネコを動物病院に連れて行くために車を買う」と言ったのだと思う。

ネコを迎えた頃を思い出すと「けっこう大きいね」と言って、ネコを連れてきた友人にあきれられ、タクシーで買い物に行って、(イナカモノの)友人にあきれられたことも同時に思い出される。今思うと「けっこう大きいね」はそこそこ失礼な発言だと思うし、何もタクシーで行かなくても、自転車で何回かに分けて買いに行くか、値段は高くても電車で行ける百貨店で買ってもよかったし(タクシー代のほうが高くついたかもしれない)、ようやく一般的になってきた楽天で買うこともできたはずだ(Amazonはまだ広まっていなかった)。

そして、買い物にタクシーで行くくらいなら、動物病院だってタクシーで行けばいいのだ。車まで買うことはない。

わたしは、ネコを迎えることがうれしくて、ハイになって、緊張していたのだなあ。失言やアホな行動はそのせい。傍から見たらさぞかしトンチンカンだったろう。はじめての「わたしのネコ」を大切に迎えて、大切に育てたかっただけなのだが。

小さかったネコ、若かったトンチンカンな自分、笑ってあきれてくれた友人。そんな愛おしい時間を積み重ねられたのは、ネコがいたからだ。
わたしのネコは、わたしの時間を豊かにしてくれた。

首輪も「お迎えグッズ」として買ったと思うのだが、首が細すぎたので自分で作った。ゴムを入れてかぶり方式にした。