ネコとクリームコーンの缶詰

ネコが好きなネコらしくない(意外な)食べ物の代表は焼き海苔だと思っていた。海苔が好きだというネコの話はよく聞く。湿気た海苔には見向きもせず、パリパリでないと食べないというのもまたよくある。ただ、わたしのネコは、海苔はまったく食べなかった。

食に関心がないというか、偏食というか、人間の食べるものはあまりねだらなかった。刺身はにおいも嗅がなかった。肉にも興味を示さなかった。当然キャットフードは好みがあって安いものより高いものが好きだったが、それは高いものは小袋に入っていて、開けたてのおいしさがあったからだと思う。また、高いものはネコの鼻をくすぐる香りがついていたのだと思う。……たぶん、スナック菓子みたいな刺激のある味なのではと思っている。
わたしはキャットフードを何度か食べたことがあるが(あまりに食べてくれないので、どんな味なのか知りたくなって食べた)、塩味がしないのでおいしいのかまずいのかわからなかった。キドニーケア(腎臓疾患用)フードにチャレンジしていた頃も、見向きもしてくれないのでわたしが試食してみたが、なんとなく味がうすいような気がした。まあ、人間の場合も「腎臓病はうす味」いう知識があったのでそう思い込んだのかもしれない。

以前も書いたが、好きなのはかつおぶし。あと、干しエビ、干し貝柱も好きだった。料理に使ったり、ダイエット中の空腹しのぎに干し貝柱をかじっていると、わたしの口元まで食べにきた。生のちくわも口元まで狙いにきたが、塩分が多いので与えないようにしていたし、ネコが寝ているときにこっそり音を立てないようにして食べたりした。

なぜかクリームコーンの缶詰も好きだった。関係ないけどわたしもとうもろこしが生(なま)も缶詰もお菓子(とんがりコーンとか)でもどんな形態でも好きで、とくにクリームコーンとたまごの中華スープが好きだ。行儀が悪いが、料理をするのが面倒なときは、コーンとツナ缶を食事にしたりしていた。ツナ缶を夕飯にするなんてネコの餌みたいとあきれられたが、ツナ缶は不思議と狙いにこなかった。
とうもろこしそのものを食べるネコもいるようだが、わたしのネコはクリームコーンしか食べなかった。とうもろこしはキャットフードの材料としても使われているので、そのせいかとも思ったが、その理由はイマイチ決め手に欠ける。野菜好きなネコもいるそうだし、ネコそれぞれとしか説明のしようがないと思う。

わたしのネコはやせて小柄で、食が細かった。子ネコのときからガツガツせず、むしろ食べなくて悩んだくらいだ。動物病院で相談すると「食欲増進剤を出しましょうか」といわれたが断った。
食欲旺盛なでぶネコだったら、ダイエットに苦労しただろう。痩せていたが小さくてふにゃふにゃした体はさわり心地がよかったし、痩せていたので長生きできたのだと思うのだが、ネコがいなくなってもなお、人間は欲張りだ。ガツガツしたところが見たかったと、ないものねだりをしてしまう。
人間の食事中に食卓はもちろん、人間の肩やひざに乗って食べ物を欲しがるネコもいる。苦手な人には「不潔」と顔をしかめられるだろうが、ネコに狙われながら刺身や焼き魚を食べたかった。マンガチックに寿司の魚だけかっさわれたりして、「♪お魚くわえたドラネコ」気分を味わってみたかった。

クリームコーンの缶詰を食べるところ。行儀悪く食卓に乗っているが、よほどの好物があるとき以外は上がらない。このときは撮影のためにわざと食卓にクリームコーンの皿を置いた。