本物の生のししゃも

今回の話はSHISHAMOという名のバンドでもなく、「子持ちししゃも」として出回っている、ししゃものニセモノの「カラフトシシャモ」のことでもない。
「魚屋で北海道産の『本物の生のししゃも』を買って焼いて食べたらとってもおいしかった」というおいしい話である。

ツヤツヤしていて見るからにおいしそうだ。体長は15cm弱。何度も書いているが、おいしいものというのは総じてツヤがよい。

塩をパラリとふって焼いた。焼いてもツヤがよい。

おいしかった。頭も食べられるが「バリバリ食らう」みたいに野性にかえらなくても、フツーに食べられる。口の中も痛くならない。
ししゃもといって思い浮かぶのはだいたい「干物の子持ちししゃも」だろう。だがこれはほとんどがししゃものニセモノの「カラフトシシャモ」らしい。挙げ句の果てには、たまごをもたないオスにたまごを注入したものまであるとかないとか(真偽のほどはわからない)。
わたしが買った本物生ししゃもはオスらしく、たまごはないのだが、実においしいかった。あっさりしているがまったく脂がないわけではなく、ほどよい。だからおいしい。その分お値段もソコソコで5尾で350円だった。1尾70円。高いなとは思う。でも、「さすが本物のししゃも」とうならせてくれたので、価格に見合う価値はあった。

ずいぶん前のことだが、居酒屋で「本ししゃも」と名乗る魚を食べたことがある。チェーンの居酒屋ではなく、2店あるのだが個人経営というか、一応会社にして従業員を雇ってはいるが基盤はおそらく家族経営(あくまで想像)。冷凍のフライドポテトなんかはメニューになくて、今風に表現するなら意識高い系の昭和版みたいな店だった。
定番ではなく仕入れによって変わるメニューが表示された黒板だか貼り紙だかに「本ししゃも980円」とあった。高いなあと思ったが、本物ならそんな値段かと自分を納得させて注文した。「本物のししゃも」を食べてみたかったので、たぶん1580円でも注文していたのではないかと思う。

供されたししゃもを見てびっくりした。
2尾しかなかったのだ。980円なのに少なすぎる! ギョッとして味もわからなかった。というか、今回自分で焼いて食べてみてわかったが、このときのししゃもはおいしくなかった。おいしかったら覚えている。
子持ちではなかったし、生ではなく干物だったと思うがそれにしてもやせてひょろひょろのししゃもで、身の気配が感じられなかった。
飲食店の原価率は30%程度という。とすると、このししゃもは1尾150円になる。わたしが今回買ったししゃもは1尾70円。
原価設定までひっぱり出すのもナンだが、「やせたししゃもの原価が1尾150円なわけないだろが!」とさかのぼって文句を言いたくなった。
今さらだが「自称本ししゃも」なだけで、本物のししゃもかどうかもアヤしく思えてきた。

今回わたしが買ったししゃもは大当たりだった。「やはりこの魚屋は信頼できる」と、いつも買っている魚屋がますます好きになった。
この魚屋はサンマが1尾390円のときもあったりする(もう少し安いときもある)。1尾390円のサンマが高いかどうかだが、百貨店だと1尾500円なんていう値段が平気でついている。500円のサンマの味は当たり外れもあるが、ランク的にはわたしのお気に入りの魚屋の390円と同等だろう。500円以上のサンマはわたしは受け入れない。だって、サンマだもの。

調べてみると、ししゃもは10~11月が漁期とのこと。しかも北海道でしか獲れないらしい。わりとよく行く魚屋だが、ししゃもを見たのははじめてだったし(わたしが行かないときにあったかもしれないが)サンマみたいにたくさん獲れる魚ではないのだろう。
今回はよい出合いができた。満足だ。
おいしい魚は贅沢品だとつくづく思う。
ししゃも2尾に980円出したからといっておいしいものに巡りあえるとも限らず・・・・・・。2尾980円が勉強代とも割り切れず・・・・・・。
おいしいししゃもを食べられたのに、ケチケチ根性がジャマをして、つまらないことを思い出してしまった。
メニューには「本ししゃも2尾980円」としっかり書いてほしかったわ。

ちなみに、わたしのネコは人間の食べ物を狙わないよい子だったので、ししゃもはもちろん刺身も食べない。
なのに、いなくなった今でも、おいしい魚があると食べさせてやりたかったなあといつも思う悲しき親心。死んだ今も、生きていたときも食べないのに(涙)。
大好物のかつお節を鼻息でまき散らしながら食べる、絶好調の4歳の頃。